「在る」、それが「愛」①

 

 

 

間もなく日をまたぐと、三十四回目の誕生日だった。

 

 

わたしは、好きなひとに、逢いたかった。

 

12月に、逢える日にメッセージをして返事はなくて、

1月に、逢える日に「逢いたいから来て」とメッセージをして返事はなくて、

2月に、逢える日にしつこく日付を送って「来てね」とメッセージをして返事はなくて、

 

自分の誕生日のその日に、

 

「逢いたい」とは言えなかった。

 

 

 

怖くて、言えなかった。

 

それまでの日は一度も約束をしていなかったから、返事がなくて落ち込んでも

それでも自分が大丈夫だということをきっとどこかでわかっていたのだ。

 

 

 

そして、

ああ、本当に逢いたいときには、

人は「逢いたい」とは言えないものなのだな、と初めて知った。

 

 

 

誕生日の直前にいつも通りメッセージを送り、

そして、以来

その人に想いを伝えることをピタリと辞めた。

 

 

 

 

 

 

 

その夜も、苦しさは襲ってきた。

その日までさんざん落ち込むシミュレーションをしてきたはずなのに、

いよいよ日をまたぐとその地獄の当日がやってくると思ったらいてもたってもいられなかった。

 

 

わたしは「逢えない」ことを知っていた。連絡がないことも、知っていた。

それなのに、最後にどこかで、もしかしたら

もしかしたらその日に

連絡がくるかもしれないと

 

どこかでそんな風に望みを抱いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

2月に入って過去の記事を一から整理するのに、

「誕生日はいつも地獄」というテーマでちょうど1年前の記録を読み返した。

 

すでに終わった恋について淡々と懐かしむことができる部分がほとんどだったが、

 

傷ついていたときの人とのやりとりの中で、

『私にはそんなことも許されないのですか?』

『私にはそんな価値もないのですか?』

と激しい痛みとともに訴えたフレーズに、

見事なまでに一瞬で反応した。

 

 

記録することはいちいち古傷を引っ張り出すようなものだが、
癒されている部分とそうではない部分が

くっきり輪郭を見せるので役にたつ。

 

 

好きなひとに返事をもらえなくなったわたしは、

それをダイレクトに「自分には存在している価値がない」と結びつけた。

「ひとを愛する行為は、自分には許されていない」と毎日感じていた。

 

奇妙だったが、

それは彼から「愛されている実感」と同時に持つことが可能であった。

 

 

しばらくテーマだった「信じる」「受け取る」と合わせて

 

 

「存在する」「愛する」

というところに何かが隠れている。

 

 

 

例えば

「わたしは存在していてはいけない人間なのだ」と苦しむ場合、

直接死への渇望に変わることはよくある。

 

 

もちろん私も毎回苦しみの頂点を迎えるとき

その向こう側へ越える手前は

今すぐに死んだほうがどれほど楽だろうと思う。

 

 

これはとても自然な反応である。

 

 

 

ただそれが”死への誘惑”として目の前に現れたとしても、

実際は、物質的な生命を絶たれることが意味をなさないどころか
それを越えたところにギフトが待っていることを

よく知っている身としては

引き返すか、乗り越えるかの2択しかそこには存在しない。

 

引き返すのは一つの楽な方法だが、

この場合の「乗り越える」が何を指すかというと

 

「死ぬ」という概念を、

身体的な次元ではない部分で実行する

ということにあたる。

 

 

 

 

ネガティブな感情を解放するときも
おおきいものを手放したことのある方はよくわかると思うが、

それは一旦「破壊」される感覚がする。

 

地獄の苦しみを解放する際に、記憶を辿ればいいような場合は

そのまま「感情の解放」を丁寧に行っていけばいいので
慣れれば全く難しくはない。

 

 

 

問題は、「記憶を辿る」ような状態ではない場合。

 

つまりは、

上に記したように

 

「死」に片足を突っ込んでいる際に

どうそこを越えていくかということである。

 

 

たびたび書いているが、

段階が上がっていくごとに「方法論」は意味をなさなくなる。

 

「まあ、越えてください」としかお伝えできなくなる。

越える方法がわかっているならばもちろん地図をお渡しするが、

向かう先もプロセスも、
蓋を開けるまでは誰にも見えない場合は

天に委ねるしか方法はないのである。

 

 

 

 

その夜、日をまたいで

晴れて独りの地獄の誕生日に突入したわたしは、

1年前の傷に激しく反応したまま

じっと悶えるようにデスクトップの電源を落とした。

 

 

 

 

 

頭を真っ白にしてふとんに潜り込み

そして

それは、始まった。

 

 

 

 

 

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