フードコート①

 

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3/11/17 記録

 

地獄の誕生日がすぎて、東京に行く予定を入れた。
例の古い知人であり、大手の出版社で雑誌の編集長をやっていたひとに
10年ぶりに会うためであった。

 

 

毎回数ヶ月に一度、服をひっくり返して割と捨てる方だが、
大好きだった人への未練を断ち切ろうと紅いセーターを捨てたときは一番苦しかった。

一度しか着ていなかった真っ赤なワンピースも、なんだかにわかに人気が出たときの自分の
過去の栄光を捨てれられないみたいですごく恥ずかしくなったので、さっさと白い燃えるゴミの袋に入れた。

それはものすごく痛みを伴ったが、想いがつまっているものを物理的に捨てることは
同時に感情の昇華の追い風になってくれる。

 

 

その後数日の間も物理的、精神的に片っ端から捨てまくった結果、

どんどん風とおしはよくなり
本当に久方ぶりに笑えた日が来た翌日、

初心に戻る

 

これまた久しぶりに買い物をしたくなった。

 

 

 

最後に洋服を買ったのは、1月半ばに
大阪でのセミナー時に恋人に会えるかもしれなかったその日のために、
ピンクと赤の下着と、ワンピースを買ったときだった。

 

ベージュのワンピを試着して、写真を撮って、
「地味かな?」と彼に写真を送った。
もちろん、返事はなかった。

 

そこから約二ヶ月。とてもじゃないけれど、きれいにして出かけたい気分にはまだなれていなかった。
ほぼ一ヶ月の間同じライラックの毛玉セーターを着て家にひきこもっていた私は、

すでに廃人街道まっしぐらであった。

 

 

翌日の東京も、今まである服で行こうと思ったのだが、
大事な約束もあるし、引越しも決まったということで

クロゼットをひっくり返していらない服を捨てることにした。

 

先日の痛痛しい手放しとは違い、

その日はサクサク、着ないものはなんの執着もなしに捨てられた。

 

息子の洋服も何ヶ月も買っておらず、
彼の早い成長のためズボンはすべてつんつるてんで哀れなありさまであった。

 

仕事も辞めて、お金がまとめて入ってきたのも12月でピタリ止まっている。

お金を使いたい欲求が消えるのとお金を稼ぐ意欲を失うのは、
わたしの場合いつも同時だし、

1月の雪の浄化祭前後ですでに「お金を使う喜び」を見失っていた。

 

 

 

何かが買いたい感覚が戻ったのは
すごくいい兆しだが、

ヒリヒリ、ヒリヒリこころはまだ痛いままだった。

心の病み上がりとリハビリに、ざわざわしながらいつもの道を行くことにした。

 

 

一時よりはだいぶ気分はましであったが、
わたしは完全なる精神の病み上がりであった。
保育園が終わったあとの夕方から、40分以上かかる場所までドライブに行く。
途中でおなかがすいて機嫌が悪くなる息子に、パン屋さんに寄ってチョコレートクリームの入ったパンを買った。
彼がトレーを触ったら、後ろにいたおばさんが「上の2、3枚触ってましたよ」と嫌な顔をした。
わたしはヒリヒリしていて、意地悪な様子に腹が立った。
パンを食べているときも、これから向かう場所も、なぜかとてつもなくヒリヒリ痛む気がした。

クマの顔をした丸いパンを食べている最中に、パンの中にチョコレートクリームが入っていることに気づいた。
息子に、「ラッキーだったね」と声をかけた。

何も考えないようにしてただ今にあるように彼の手を引いた。
車に乗って、少し腹がふくれて機嫌のよくなった息子を横目に、

もう何度もなんども同じ道を通ったことのある大きな川の上の橋を渡る。

 

左に大きな沈む前の太陽と、右にはうっすらと満月がみえていた。

ずっと、怖くて、息子に話しかけ続けた。

 

なんだか、止まった瞬間にいろいろなものがあふれ出てきそうで、

ひりひりを、覆い隠すように、優しく、話しかけた。

 

 

 

 

週末のモールなどという場所は、人が多く本来いくものではない。
いつも駐車場がいっぱいのモールは、すでに夕方だったのでいくつも穴が空いていた。

1年前に別れた恋人と三回くらい一緒に行った。

彼と一緒に行った時に「ここが穴場なんだよ。」と言われた駐車スペースが、
いつもひとりで行くときに停める場所と同じだったことを思い出した。

 

その日も同じ場所に向かうと、陽が暮れかかったモールの駐車場は空いていて、
息子に「ラッキーだったね」と言った。

ヒリヒリも、ざわざわも止まる気配がなかった。

1年前の、恋人と最後に過ごしたその日。わたしは同じ場所にいた。

 

 

そのあとも何度も足を運んでいたし、傷は時間とともにほとんど癒えていたが

過去記事を整理するために読み返し、

そして何がそのとき起こったのかを
改めて変化したあとの自分が眺めると、その時見えなかったいろいろなことが見えた。

 

 

稚拙で、わかったようなことを言う自惚れて自己過信している自分。

いまもさほど変わってはいないが、少なくとも自分を大してあてにしなくなった部分では
すこしはマシだった。

 

 


彼に最後に会った日、自分の誕生日だった。

前から旅行に連れていってもらう約束をしていたが、別れた時点でなしになっていた。
プレゼントも、すでに買ってくれていた。

でももらうどころか見ることすらなかった。

 

わたしはプレゼントも旅行もいらないから、もう一度彼にやりなおすチャンスが欲しいと言った。

自分の全てを込めて、恥をかいても惨めでもいいから、
泣きついて一緒にいたいと、

振られてしばらくした後の誕生日に、伝えに行ったのだ。

 

 

彼は氷のように冷たくて、私の顔すら見なかった。

 

思い出してもゾッとするくらいに、わたしを軽蔑するような眼差しだった。

 

その日突然押しかけた私に、「今から出かける」と言った行き先が、そのイオンモールであった。

タオくんと一緒に、ついていってもいいか聞いた。
彼は黙って了解して、わたしは彼の車に乗りこみ、ついていった。

 

 

モールに着くなり彼は、逃げるようにして自分の用事に向かったのをよく覚えている。

彼はたおくんには優しかったが、1秒でも早くわたしと別れたがっているのがよくわかった。

 

 

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