一雫

Bill Evans のPeace piece がずっと

雨のなかで鳴り響いていて

死ぬまでに、これをピアノで弾けるようになったらいいなと、いつか思うようになった。

小さなころ、わたしは何も、知らなかった。

ピアノの音や、雨や、花々や、木々が育つ姿や、空が動き続けていることがどれくらい

美しくて尊くて、

それだけでよいのだということが

わかったのは

とても、

とても後になってからだった。

 

もう、今の自分の人生のこの折り返し地点で

何も望まないから

ただこの先も

世界の一部として、小さな音を奏でてゆけたら

ほんとうに十分だとそう思う

 

 

しばらく前にずっと感じていた、もう

自分がどこに向かいたいか見当もつかなくなってひたすら方角もわからぬだだっ広い海の上に漂うみたいにして

何を得ても

この虚しさが一生続くんだと感じていた時間のことを

いつのまにか

忘れてた

 

がむしゃらに

目の前に

必死に

声が出なくなるまで話して

世界がよりよくなるために力を尽くすこと

 

終わりなき旅

 

愛する人が、まだ私にとても信頼したようすで

「ありがとう!」と目を潤わせることだけが

全てで

 

いつかそれをまた、どこかでふいに、失ったらわたしは

迷子になるのかな

と思ったけど

 

きっと、それもいい

 

宇宙の果てまで漂流しても

内側でずっと、鳴り響くピアノの音が、わたしをきっと

どこかへ戻していく

 

目的がある旅

なくてもよい旅

終わりなき、旅の終わりまで

ただこんな曇った雨の日が

 

続けばいい

 

いつかもどかしく

何をすればいいかわからなかった私に

ハチドリのひとしずくのことや

いまこのしゅんかんに目の前にいる、誰かのために生きていいって

そう言うよ

 

 

 

 

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