雪の浄化祭 Stuck①

stuck

 

 

 

大阪から愛知県までは、車で3時間弱。

 

その日イケアを出発したのは、昼よりも遅く、夕方よりは早い、
2時だか3時頃であった。

計算上では夕飯までには十分家に着くことになる。

 

来た時にとても焦って遅刻ぎりぎりで、マラソン大会やらパトカーやら
たくさんのアクシンデントに見舞われたわたしは、

ゆっくり時間をかけて帰ることにした。

のんびり運転をして、パーキングエリアで休憩して、
うどんだかコロッケを食べて、お土産を買って帰ろう。

スターバックスがあったら労いに、贅沢にも500円もする何とかラテを買おう。

 

ガソリンはそのままギリギリ家に帰れるくらいはあったが、
もし途中で必要があれば休憩したときに入れればいい。

 

わたしはiphoneのmapがよくわからない英語でしゃべるとおりに
高速道路にのり、来た時と同じように運転を始めた。

 

高速にのってからしばらくすると、雪がちらついてきて

私のテンションは上がった。

わたしは雪がいつも、大好きだった。

 

 

1時間半くらい走ったころに少し渋滞して、

抜けるまでには少し時間がかかりそうであったが、いまならどれだけ渋滞しても遅刻する予定がなかった。

 

わたしは、余裕でその風景を楽しんで、雪を見て、

返事のない大好きな恋人のことを想った。

IKEAへ向かっていたときの虚しさは、気づいたら抜けていて
彼に雪の写真とともに、

なんでもないメッセージを送った。

わたしは彼がそれを読んで、わたしのことを思い出してくれることを想像して、

それだけでいつも幸せになった。

 

 

 

 

 

ひととおり彼に一方的に絡んでわたしは満足して、

渋滞で止まった車と雪のおかげでもういちど優しい気持ちになれたことに感謝した。
絶望しながら器用に愛す

 

じりじりと、ブレーキを踏みながら前に進む時間も過ぎて、

そのうち車はまったく動かなくなった。

 

 

 

今自分がどのあたりにいて、あとどのくらいで渋滞を抜けて、
そして家に着くのかはよくわからなかったが、

時間もすでにしっかり夕方を越したあたりであたりは暗くなっていた。

 

 

 

お腹がすいてきたが、とっくに休憩する予定だった時間だったため

何も用意をしていなかった。

わたしはイケアを出るときに、レジを越えた出口の前にある
食料品売り場で最後に買った、ビスケットの封を開けた。

赤い箱のなかにアルファベットのかたちをしている乾いたビスケットが入っている。それは甘すぎず、かすかにスパイスの味が効いていて
行ったことがないがスウェーデンの匂いがする。

飲み物もなく、わたしはそのビスケットを何枚か齧って、空腹を紛らわせた。

 

 

外はとても寒いだろうが、車のなかは暖房がかかっており、凍えることはない。

どこかに閉じ込められることもまた、

高速道路で100キロで走るのと同じくらいMeditativeである。

 

 

 

わたしはじっとその中で、いろいろなことに想いを馳せた。

 

自分が経験しているすべてを、

その手前で道に迷っているひとに伝えられたらとそう願い続けながら、

車を止めてSNSにいくつか投稿をした。そのときはまだ、facebookを辞める前であった。

 

 

現実の生活で話し相手のいない私にとって、

SNSは家族よりも一緒に過ごす時間が長かった。それがいいことなのか、悪いことなのかは当時わたしには考えるよしもなかった。

 

写真や投稿を繰り返して、見知らぬひとからの反応をいちいち全て、確認した。

親しい人もいたし、一度もあったこともなければ
全く知らないひとがほとんどであった。

 

 

誰かが自分のことを知っていてくれることや、反応してくれることは、

自分がこの世界に存在していることを

ぎりぎり、赦してもらっている気がした。

 

 

 

わたしは12月に恋人から返事がなくなってから、

一回、彼にメッセージを送っては

返事がないことを繰り返し、繰り返し、

まいにち繰り返すたびに

 

 

 

自分の発する声は、意味がなくそして、

存在してはいけないものなのだ

 

とていねいに、実に注意深く、

確認しているようなものあった。

 

 

 

 

 

 

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