「おかえりなさい」

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打ち合わせで

エネルギー当たりをし、セッションで多少洗われたものの

 

少し頭痛がして

お風呂にゆっくり浸かってじゃぶじゃぶ水で流してから

 

ベッドに雪崩れ込むように

わたしは突っ伏して

 

彼の遅い帰りを待った。

 

 

ドキドキしながらチャイムが鳴るのを待つには

 

時間も遅すぎていて

それには 疲れすぎていて
ドアを開いて迎える元気もなかったので、扉を少しだけ開けて

そのまま眠りに落ちそうなまま

 

ホテルのワッフル生地のパジャマだけ身に纏って

 

ダブルベッドの上に

垂直に

 

 

うつ伏せになった

 

 

 

髪は濡れたままで

下着はいつもつけていなくて

 

部屋はホテル特有の

乾いた暖房の匂い

 

 

パリッと固い

冷たいシーツに顔をうずめるのがすき
程なくして

そんなに足音もしないまま

静かにドアの開く音がして
彼が帰ったのがわかった。

 

 

 

その人のすきなところのひとつは

 

物腰のやわらかいところがあるが
身のこなしに雑然さがなく

とても穏やかで

 

わたしはその佇まいの静けさに

いつもホッとする。
部屋にその人が入ったときも

音がしなくて

 

優しいエネルギーにそっと包まれるような中

 

 

小さな声で

 

「おかえりなさい」

とわたしは言った。

 

 

暗がりの部屋の中で
聞き慣れた心地のいい声

 

暖かいカモミールティーに摘みたてのミントを加えたような

蒼く鎮静させる声で
「ただいま」
と聴こえた。

 

 

 

芋虫のように這って

ベッドの前に立つひとをひとり

捕まえる。
ベッドの上に

立膝になってそのまま

 

大きく手を拡げて

 

 

ひとつのおもりのようにその身体にぶら下がる

 

 

ネクタイを外したスーツ姿の

 

大きな肩に手をまわして

 

わたしが彼の首元に顔を寄せて

このあいだと同じように匂いをかぐと

 

彼はいつものように

わたしの唇を、つかまえる

 

 

さいしょから、抱きしめて

と駄々をこねるのはわたしだった。
でも、自分が何かを望む前に、

 

わたしはいつも

彼に腕のなかにすでにいて

抱かれて

口の中をモゴモゴさせている。

 

 

 

 

長くて、短い

 

彼と眠る2回目の夜。

 

 

 

たくさんの愛と

今までにはなかった「安心」の中に

 

どっぷり浸かって

 

幸せそうにしているそのひとの姿を見て

夜通し色々なことを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

月に一度くらいの

 

 

わたしの、

 

ささやかな月の下の喜び。

 

 

 

「おかえりさい」

 

 

 

「ただいま。」

 

 

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